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極低温対応の位置決めステージとは?

極低温環境で試料や部品を移動させる場合、使用する温度域に対応した位置決めステージが必要です。

特に半導体や量子技術、低温物性などの研究開発では、4KやmKといった極低温環境で試料の位置を調整することがあります。しかし、常温で使用する位置決めステージをそのまま極低温環境に設置すると、材料の熱収縮や潤滑剤の状態変化などによって、常温時とは異なる動作特性になる可能性があります。

また、極低温環境では、真空や磁場など別の条件が同時に求められることもあります。そのため、位置決めステージを選定するときは、対応温度だけでなく、分解能、繰り返し精度、ストローク、使用材料、潤滑方法などを確認することが重要です。

この記事では、極低温環境で位置決めステージを使用する際に生じる課題や、必要な性能、選定時に確認したいポイントについて解説します。

極低温環境で位置決めステージが必要になる用途

極低温対応の位置決めステージは、低温状態にした試料や部品を移動させながら測定・観察する研究設備などで使用されます。

代表的な用途として、半導体・量子デバイスの研究開発、低温物性研究、光学・計測システムなどがあります。

半導体・量子デバイスの研究開発

半導体や量子デバイスの研究では、低温環境に試料を置いて特性を評価する場合があります。

このような装置では、試料の位置を調整するために位置決めステージを使用します。測定対象の位置を細かく変更する必要がある場合は、移動量だけでなく、設定した位置にどの程度正確に移動できるかを確認する必要があります。

低温物性・量子研究

低温物性の研究では、クライオスタットや希釈冷凍機などを使用して試料を低温状態に保ちながら測定する場合があります。

このような設備では、試料やセンサーなどの位置を調整するために位置決め機構が使用されます。

特に4K以下の温度域では、ステージを構成する材料や潤滑方法などが動作に影響する可能性があるため、使用温度に対応した仕様か確認する必要があります。

光学・レーザー・計測システム

光学系では、レンズ、ミラー、試料などの位置を調整するために位置決めステージが使用されます。

極低温環境に光学部品や試料を配置する装置では、位置決めステージにも低温環境への対応が求められます。

極低温環境で位置決めステージを使用するときの課題

極低温環境では、温度が低いこと自体だけでなく、冷却に伴う材料の変化や、真空・磁場などの周辺条件も考慮する必要があります。

材料の熱収縮によって位置関係が変化する

材料は温度によって寸法が変化します。常温から極低温まで冷却すると、ステージを構成する部品にも熱収縮が生じます。

さらに、ステージ本体、ガイド、ベース、固定する部品などで異なる材料を使用している場合、それぞれの熱膨張係数の違いによって収縮量も変わります。

その結果、常温時には一定だった部品同士の位置関係が、冷却後に変化する可能性があります。

極低温環境で高い位置決め精度が必要な場合は、ステージが低温で動作するかだけでなく、冷却による寸法変化が位置決めにどのように影響するかも確認する必要があります。

潤滑剤の状態変化が動作に影響する

位置決めステージの可動部には、摩擦を抑えるために潤滑剤が使用される場合があります。

しかし、極低温環境では潤滑剤の種類によって粘度や状態が変化するため、常温環境と同じ条件で使用できるとは限りません。

そのため、極低温用の位置決めステージでは、使用温度に適した潤滑方法が採用されているか確認する必要があります。

製品によっては、グリスなどの液体潤滑剤を使用せず、ドライ潤滑や固体潤滑を採用しているものもあります。

真空環境ではアウトガスを考慮する必要がある

極低温環境では、真空環境と組み合わせて位置決めステージを使用する場合があります。

真空環境では、ステージを構成する材料や潤滑剤などから放出されるガスが問題になることがあります。これがアウトガスです。

特に高真空・超高真空環境で使用する場合は、ステージに使用されている材料や潤滑方法が、要求される真空度に適しているか確認する必要があります。

磁場環境では使用材料や構造を確認する必要がある

低温研究設備では、磁場を利用した実験が行われることがあります。

磁場環境で位置決めステージを使用する場合は、ステージを構成する材料や駆動機構などが実験条件に適しているか確認する必要があります。

特に強い磁場を使用する設備では、ステージだけでなく、ケーブルやセンサーなど周辺部品についても使用条件を確認することが重要です。

極低温対応の位置決めステージに必要な性能

極低温環境で使用する位置決めステージを選定するときは、単に「極低温対応」と記載されているかだけで判断するのではなく、実際の使用条件に必要な性能を確認する必要があります。

使用温度に対応していること

最初に確認するのが対応温度です。

極低温と呼ばれる温度域は広いため、「低温対応」という表記だけでは、使用する環境に適合するか判断できません。

たとえば4Kで使用する場合は、4Kでの動作が仕様として示されているかを確認します。さらにmK領域で使用する場合は、必要な温度まで冷却した状態での動作可否を確認する必要があります。

低温環境で必要な分解能を確保できること

分解能は、位置決めステージがどれだけ細かく位置を制御できるかを示す指標です。

ナノメートル単位の位置調整が必要な場合は、必要な分解能を満たしているか確認します。

ただし、分解能の数値だけで位置決め性能を判断することはできません。使用温度、測定方法、制御方式などによって実際の位置決め性能が変わる場合があるためです。

分解能と繰り返し精度は異なる指標です。それぞれの意味や違いについては、位置決めステージの分解能と繰り返し精度の違いで詳しく解説しています。

繰り返し精度を確認する

繰り返し精度は、同じ位置への移動を繰り返したときに、どの程度同じ位置へ戻れるかを示す指標です。

同じ位置へ何度も試料を移動させる実験では、分解能だけでなく繰り返し精度も確認する必要があります。

特に極低温環境では、冷却による材料の収縮などが発生するため、使用する温度条件における繰り返し精度を確認することが重要です。

必要なストロークを確保できること

ストロークは、ステージが移動できる距離です。

位置決めステージを選定するときは、必要な移動距離をあらかじめ決めておく必要があります。

数mm程度の微小な移動で足りる用途と、数百mm以上の移動が必要な用途では、必要なステージの仕様が異なります。

また、一般的に高い位置決め精度と長いストロークを同時に求める場合は、製品の選択肢が限られる可能性があります。そのため、精度だけでなく必要な移動距離も含めて選定することが重要です。

設置スペースに収まること

極低温実験では、クライオスタットや冷凍機などの限られたスペースにステージを組み込む場合があります。

そのため、ステージの外形寸法だけでなく、ケーブルの取り回しや周辺部品との干渉も確認する必要があります。

極低温対応の位置決めステージを選ぶ5つのポイント

1.使用温度を明確にする

まず、位置決めステージを使用する最低温度を明確にします。

「極低温」という言葉だけでなく、4K、1K、100mKなど、実際の使用温度を具体的な数値で整理することが重要です。

2.必要な分解能と繰り返し精度を決める

次に、実験で必要な位置決め性能を決めます。

たとえば、1nm単位の位置制御が必要なのか、10nm単位で十分なのかによって、必要なステージの仕様は変わります。

分解能と繰り返し精度は異なる指標なので、それぞれ必要な値を設定することが重要です。

3.真空度と使用材料を確認する

真空環境で使用する場合は、必要な真空度を明確にします。

大気中で使用するステージと、高真空・超高真空環境で使用するステージでは、確認すべき材料や潤滑方法が異なります。

そのため、ステージの仕様だけでなく、使用材料や潤滑方法についても確認します。

4.磁場の有無と条件を確認する

磁場環境で使用する場合は、磁場の強度や方向など、実験条件を具体的に整理します。

そのうえで、ステージ本体だけでなく、駆動部、エンコーダー、ケーブルなどが使用環境に対応しているか確認します。

5.ストロークと設置スペースを確認する

最後に、必要な移動距離と設置スペースを確認します。

必要なストロークが長くなるほど、ステージのサイズや構造にも影響します。

特にクライオスタットなどの内部に設置する場合は、ステージ本体の寸法だけでなく、周辺部品との干渉や配線スペースまで含めて検討する必要があります。

極低温環境ではクローズドループ制御も検討する

極低温環境で高い位置決め精度が必要な場合、クローズドループ制御を採用した位置決めステージも選択肢になります。

クローズドループ制御とは

クローズドループ制御は、ステージに移動指令を送るだけではなく、センサーなどで実際の位置を検出し、その情報を制御に利用する方式です。

基本的な流れは、以下のとおりです。

  1. 目標位置を設定する
  2. ステージを移動させる
  3. 実際の位置を検出する
  4. 目標位置との差を確認する
  5. 必要に応じて位置を補正する

これに対して、実際の位置を検出せず、駆動量から位置を推定する方式はオープンループ制御と呼ばれます。

極低温環境で位置フィードバックを確認する理由

極低温環境では、冷却による材料の熱収縮などによって、常温時と部品の位置関係が変化する可能性があります。

そのため、極低温環境で位置決め精度を求める場合は、駆動機構だけでなく、実際の位置をどのように検出しているかを確認することが重要です。

エンコーダーの仕様も確認する

クローズドループ制御では、位置を検出するエンコーダーが重要な構成要素になります。

エンコーダーを使用する場合は、分解能だけでなく、使用温度、真空環境への対応、磁場環境への対応なども確認する必要があります。

極低温対応の位置決めステージとピエゾステージの違い

極低温環境で使用する位置決めステージを探す際、「ピエゾステージ」という名称も検索結果に出てくることがあります。

ただし、「極低温対応」と「ピエゾ方式」は同じ意味ではありません。

極低温対応とは、一定の低温環境で使用できるよう設計されていることを示す条件です。一方、ピエゾステージは、圧電素子(ピエゾ素子)を利用してステージを駆動する方式を指します。

そのため、ステージを選ぶときは、駆動方式だけでなく、使用温度、必要な分解能、繰り返し精度、ストローク、真空度などを個別に確認する必要があります。

ピエゾステージについて詳しく知りたい場合は、ピエゾステージとは?仕組み・特徴・用途を解説も参考にしてください。

まとめ|極低温対応の位置決めステージは使用環境を具体化して選ぶ

極低温環境で位置決めステージを使用する場合は、「極低温に対応しているか」だけでなく、実際の使用環境と必要な位置決め性能を具体的に整理することが重要です。

特に確認したいのは、以下の項目です。

また、極低温環境では材料の熱収縮や潤滑剤の状態変化が発生する可能性があります。真空や磁場を組み合わせる場合は、それぞれの条件にも対応する必要があります。

位置決めステージを選定するときは、まず「何Kで使用するのか」「どの程度の分解能が必要なのか」「何mm移動させるのか」「真空や磁場があるのか」といった条件を数値で整理し、その条件を満たす製品の仕様を比較するとよいでしょう。

実現したい位置決め精度別
豊富なラインナップと
カスタマイズ性に優れた
位置決め
ステージメーカー3選

位置決めステージを動作範囲の小さい順に並べると、ピエゾステージ・ステッピングモータステージ・リニアモータステージの3種類に大きく分類できます。充実したラインナップから選べて、いざというときはカスタム開発もできるおすすめメーカーをご紹介しているので、依頼先選びの参考にしてみてください。

半導体・研究開発など
微細な位置決めに特化した
ピエゾステージなら
フィジックス
テクノロジー
フィジックス テクノロジー

引用:フィジックス テクノロジー公式サイト
(https://physix-tech.com/index.html)

ピエゾステージ
よく使われる業界
  • 半導体製造装置
  • 光学機器
  • 計測装置
  • ナノテクノロジー
  • バイオテクノロジー
フィジックス テクノロジーが
開発する
ピエゾステージの強み
  • 通常では数センチが限界のナノ精度制御をメートル単位の長距離移動でも実現
  • 超高真空環境・極低温・磁場・放射線環境下でも破損なくナノ精度の位置決めが可能
  •            
  • サブナノレベル分解能を有する光学エンコーダと構造設計・組立技術によって極めて高い繰り返し精度を発揮する
工作機械・流体制御など
ゆっくり動かす機械に強い
ステッピングモータステージなら
コムス
コムス

引用:コムス公式サイト
(https://www.coms-corp.co.jp/)

ステッピングモータステージ
がよく使われる業界
  • 自動組立ライン
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  • 工作機械
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  • オプトメカニカルデバイス
コムスが開発する
ステッピングモータステージの強み
  • CNCマシン、マシニングセンタなどの工作機械用ステージ数が充実している
  • 既存の機種と合わない場合には、仕様に合わせたフルカスタムに対応できる
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プレス機・搬送装置など
速度安定性に優れた
リニアモータステージなら
日本トムソン
日本トムソン

引用:日本トムソン公式サイト
(https://www.ikont.co.jp/)

リニアモータステージ
よく使われる業界
  • FPD製造装置
  • プレス機器製造
  • 搬送装置開発
  • 電子部品の組立ライン
日本トムソンが開発する
リニアモータステージの強み
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  • コンパクト、ロングストローク、ハイスラストから用途別に選択できる
  • ベアリングや直動案内機器で培った技術により、ガイド精度が高い