次世代半導体製造装置や精密検査装置、量子デバイス評価装置では、ナノメートルレベルの位置決め精度が要求されます。その精度を左右する重要な設計原則の一つが「アッベの原理(Abbe Principle)」です。
アッベの原理は単なる測定理論ではなく、リニアステージや位置決めシステムの構造設計、センサ配置、誤差評価に直接関わる基本概念です。
本記事では、アッベの原理の基本から、位置決めステージ設計への応用、長ストローク化や真空・低温環境における考慮点まで解説します。
アッベの原理とは、「測定対象と測定基準(スケール)の軸を可能な限り一致させることで、角度誤差による位置誤差を最小化する」という設計原則です。
位置決め機構には、ガイドのわずかなピッチング・ヨーイング・ローリングなどの角度誤差が必ず存在します。
このとき、実際に制御したいワーク位置と位置センサ(リニアスケールやエンコーダ)の検出位置が離れていると、その距離(アッベオフセット)に比例して位置誤差が発生します。
そのため、高精度な位置決めシステムでは、ワーク位置と計測基準軸を可能な限り一致させることが重要になります。
アッベ誤差は、アッベオフセットと角度誤差の組み合わせによって発生します。
近似的には次式で表されます。
アッベ誤差 ≒ アッベオフセット × 角度誤差(rad)
例えば、アッベオフセットが100mm、ピッチング誤差が10μradの場合は次のようになります。
アッベオフセット:100 mm 角度誤差:10 μrad 100 mm × 10 × 10⁻⁶ = 1 μm
さらにアッベオフセットが300mmになると、
アッベオフセット:300 mm 角度誤差:10 μrad 300 mm × 10 × 10⁻⁶ = 3 μm
このように、角度誤差そのものが変わらなくても、アッベオフセットが大きくなるほど位置誤差は比例して増加します。
ナノメートルオーダーの位置決めでは、このような微小な角度誤差が最終的な位置決め精度に大きく影響します。
半導体製造装置や精密検査装置では、位置制御はリニアスケールやレーザー干渉計などの高精度センサを利用して行われます。
しかし、制御系が高性能であっても、センサ位置と実際のワーク位置に高さ方向や横方向のオフセットが存在すると、ガイドの角度誤差によって実際のワーク位置にはズレが生じます。
そのため、位置決め性能はセンサ分解能だけで決まるものではなく、機械構造全体で評価する必要があります。
これらを総合的に最適化することで、高い位置決め性能の実現につながります。
最も基本となる考え方は、制御対象となるワーク位置と位置検出軸を可能な限り一致させることです。
高さ方向のオフセットを小さくするだけでも、ピッチングによるアッベ誤差を大幅に低減できます。
長ストロークステージでは、わずかな角度変化でも先端位置で大きな位置誤差となって現れます。
そのため、以下のような要素を含めた総合的な誤差設計が重要です。
実際の装置では、温度変化による構造変形や熱膨張によってセンサ位置とワーク位置の相対関係が変化する場合があります。
そのため、アッベ誤差だけでなく、以下のような熱設計も重要になります。
半導体製造装置や量子デバイス評価装置では、真空環境や低温環境で使用されるケースも少なくありません。
このような環境では、材料の熱収縮や熱膨張係数(CTE)の違い、温度勾配による変形、構造バランスの変化などによってアッベオフセットが実質的に変化し、位置決め精度へ影響を与える可能性があります。
そのため、機械設計・熱設計・制御設計を組み合わせたシステム全体での最適化が求められます。
アッベの原理は、高精度位置決めシステムにおける基本的な設計原則です。
特にナノメートルレベルの精度が要求される半導体製造装置や精密検査装置では、センサ性能だけでなく、ワーク位置との幾何学的な配置関係が最終的な位置決め精度を大きく左右します。
また、長ストローク化や真空・低温環境では、熱変形や構造変化も加わるため、アッベの原理を踏まえた機械設計・熱設計・制御設計を統合的に検討することが、高精度化の重要なポイントとなります。
位置決めステージを動作範囲の小さい順に並べると、ピエゾステージ・ステッピングモータステージ・リニアモータステージの3種類に大きく分類できます。充実したラインナップから選べて、いざというときはカスタム開発もできるおすすめメーカーをご紹介しているので、依頼先選びの参考にしてみてください。
引用:フィジックス テクノロジー公式サイト
(https://physix-tech.com/index.html)
引用:コムス公式サイト
(https://www.coms-corp.co.jp/)
引用:日本トムソン公式サイト
(https://www.ikont.co.jp/)