繰り返し精度とは、位置決めステージなどの機器が同じ方向から同じ位置を繰り返し狙ったときに、どの程度安定して正確にその位置に止まれるかを表す性能指標です。
具体的には、ある特定の目標位置に対して、同じ方向から七回繰り返して位置決めを行い、実際に停止した位置のばらつき(つまり、最も離れている2点の距離)の半分を±の範囲で示します。
この精度の評価は、ステージの可動範囲の中央と両端、計三箇所で測定されます。また、誤差の最大差の「半分」を許容値とする点が特徴的で、ISO 230-1:1996という国際規格と整合させる目的で、日本の工業規格JIS B6191:1999で定められた方法です。現在では、この方法が工作機械の静的精度を確認する標準的な手法として広く利用されています。
位置決め精度とは、ある目標位置に一度だけ動かしたときに、実際の停止位置がどの程度ずれているかを示すものです。一回の動作における誤差を表しており、たとえば一回の移動で0.005mmずれたといった場合の精度を評価する際に使われます。
これに対して「繰り返し精度」は、同じ目標位置に何度も繰り返して位置決めを行ったとき、その結果のばらつきがどの程度あるかを示す再現性の指標です。
ロストモーションは、同じ位置に向かって、正回転方向と逆回転方向の両方から位置決めを行ったときに、その停止位置にどれだけ差が出るかを示す指標のこと。単なるバックラッシ(機械的な遊び)だけでなく、装置全体の機構的な誤差や相互作用を含めた全体の影響を評価するものです。
まとめると、位置決め精度は単一の動作の精度を示す指標です。対して繰り返し精度とロストモーションは、装置の動作がどれだけ一貫していて信頼できるか、さらにはどの程度の安全係数を確保すべきか、といった設計・運用上の判断に直結する本質的な性能指標といえるでしょう。
測定の基本的な手順としては、ある任意の位置を目標として、その位置に同じ方向から七回連続で位置決めを行います。そうして得られた停止位置のうち、最も離れた二点間の距離を取り、その最大差の半分を±の許容範囲として評価値とします。
この測定は、ステージのストローク全体に対する特性を把握するために、可動範囲の中央と両端の計三箇所で実施されます。すべての箇所で個別に最大差を求め、それぞれについて同様に評価することで、全体の再現性のばらつきを把握できるでしょう。
また、測定結果に影響を及ぼす外部要因を最小限に抑えることが、信頼性の高い精度評価には不可欠です。そのため、測定はJIS Z8703などで定められている標準温度、すなわち20℃±1℃の範囲内で行うことが推奨されます。測定室の温度を一定に保つだけでなく、使用する装置や測定対象の温度も事前に十分慣らしておく必要があります。これは、材料の熱膨張や機構部の内部応力による誤差を防ぐためです。
さらに使用する計測機器にも高い精度が求められます。国家標準にトレーサブルなレーザー干渉計や、高分解能の位置測定装置を用いることが基本となります。測定者の体温や照明器具からの熱が測定対象に影響を与えないよう、測定環境全体に対する細やかな配慮も重要なのです。
ステージを動かすときには、その動きを案内する「ガイド」という仕組みがあり、よく使われるものにはボールガイドやプロファイルローラーガイドがあります。これらはガイドポストと呼ばれる棒と、それにかぶさるブッシュという部品の間にごくわずかなすき間、例えば0.001ミリから0.02ミリ程度の予圧を与えて調整します。
ガイド方式によって部品同士が接する点の数や、ガイドの中にあるリテーナという保持材の材質が変わると、動かしたときに部品がわずかにずれてしまう「クリープ現象」や、ステージに片側だけ重みがかかったときの耐性に違いが出てきます。これが、繰り返し精度の違いにもつながるのです。
また、ステージを動かすためのねじやギヤには「バックラッシ」と呼ばれる、部品と部品の間のわずかなすき間が存在します。これがあると、進行方向を変えるときにわずかに遅れて動き出してしまい、これが「ロストモーション」として精度に悪影響を及ぼすのです。
近年では対策として、バックラッシをなくす構造や、常に部品同士を押し付けて隙間をなくす「プレロード機構」といった工夫がされています。
位置決めステージの駆動方式によって繰り返し精度に影響が与えられます。
ボールねじ駆動ではモーターの回転をねじを通して直線的な動きに変える仕組みで、比較的コストを抑えながら0.01ミリから0.05ミリ程度の繰り返し精度を出すことができます。ただし、ねじを使うために部品同士にバックラッシが生じたり、素早い動きへの反応(動的応答性)や、重たい物を支えたときの強さ(剛性)に限界があるという弱点もあります。
リニアモータ駆動やピエゾステージなどの直接駆動方式であれば、ボールねじ駆動に比べ高い繰り返し精度を発揮します。ただし、設計や制御への工夫やコストなども考慮する必要があるでしょう。
ステッピングモータと呼ばれるタイプのモータでは、その仕組み上、決められた角度ごとに少しずつ動く「ステップ動作」を使って位置を制御します。
このときモータが一度に動く角度を「フルステップ」と呼びますが、これをさらに細かく分けることも可能。「ハーフステップ」ではその半分に、「マイクロステップ」ではさらに細かく、最大で1ステップを250分割することもできます。こうすることでステージをより滑らかに、高精度に動かせるようになるのです。
しかし実際には、モータの回転だけでは理想通りに動かせないこともあります。その理由として、ステージが動くときの「摺動抵抗(すべりにくさ)」や、本体の「構造の硬さ(剛性)」といった物理的な制約が関係してきます。これらの影響を受けると、たとえ1/250のマイクロステップを設定していても、現実的にきちんと追従できるのは1/8から1/20程度の細かさまでとなることが多いのです。
ここで重要になるのが「モータドライバ」と呼ばれる制御装置の働きです。モータドライバはモータに流す電流をきめ細かくコントロールする役目を持っており、その設定や内部のソフトウェア(ファームウェア)によって、モータが1パルス動くごとの距離を正確に制御します。こうした調整によって、システム全体の分解能と繰り返し精度のバランスを適切に保つことができるのです。
長時間にわたる連続運転や、周囲の温度が変化することでステージ内部のステッピングモータやドライバが発熱します。この発熱に加え、装置を構成する素材自体が温度変化により膨張するため、結果として位置決め精度にズレが生じる「熱変形ドリフト」という現象が発生します。これは、ステージが目標位置に正確に戻れなくなる原因のひとつです。
このような問題に対処するには、測定室内の温度を常に標準温度である20℃に保ち、かつエアフローを制御することが基本となります。
また装置の内部に真空チャンバを設けることで、外部の温度変化の影響を最小限に抑えることができるでしょう。そのほか、温度の変化に応じて機械的なズレを自動で補正するための温度補正アルゴリズムを導入することも、繰り返し精度の確保には必要となります。
位置決めステージの繰り返し精度を維持・保証するためには、定期的な校正が欠かせません。自動ステージの校正作業は、基本的に日本産業規格であるJIS B6190に準拠して行われます。
この規格に基づき、国家標準とトレーサブルな高精度の標準器を用いて、位置決め精度や繰り返し精度・ロストモーション・および平行度などを厳密に測定・検証します。
校正の頻度については、ステージが使用される環境や装置の稼働状況によって異なります。特に高い精度が求められる精密加工装置の場合には、少なくとも年に1回以上の定期校正が推奨されます。
校正によって得られたデータをもとに、制御パラメータの見直しや最適化、さらには摩耗・劣化が確認された部品の交換など行うことができるでしょう。ステージの性能を常に安定させ、信頼性の高い動作を長期にわたって維持することが可能になります。
位置決めステージを動作範囲の小さい順に並べると、ピエゾステージ・ステッピングモータステージ・リニアモータステージの3種類に大きく分類できます。充実したラインナップから選べて、いざというときはカスタム開発もできるおすすめメーカーをご紹介しているので、依頼先選びの参考にしてみてください。
引用:フィジックス テクノロジー公式サイト
(https://physix-tech.com/index.html)
引用:コムス公式サイト
(https://www.coms-corp.co.jp/)
引用:日本トムソン公式サイト
(https://www.ikont.co.jp/)